きもの小物

腰紐、侮るなかれ。これがオススメの腰紐。

腰紐、何を使っていますか?

 

モスリン、綿、きんち(絹)、ゴムベルト……。

いろいろあります。

 

使いやすければ、なんでもいいと思います。

ただ、何を持って「使いやすいの?」

そこがわからないと、ちょっと迷いますよね。

 

こんなことを書いているのは、

編集者やクリエイター系の、超初心者の友人たちに

着付けを教えていて、感じたことなのです……。

 

 

ということで、今日のテーマは、 腰紐です。

 

IMG_3292.JPG

 

 

初心者でも、着付けの道具は

山盛り持ってくる人が多いのです。

 

その中身は、

“家にある”“歴代”の(笑)、着付けグッズです。

 

歴代———そうなんです、お母さんだけでなく、叔母さん、

お祖母ちゃんのものまで揃っています(笑)。

 

本人も何がなんだかわからないけど、

「きもの」といえば「我が家では皆、これ」を使うとばかり、

歴代アイテムをまとめて保管しているお家が多いのです(笑)。

 

 

腰紐は、モスリンもあれば、昔ながらのピンクのポリ紐もあり。

また、スマホの充電器のコードより

細い紐がついている帯枕とか(笑)。

ストッキングで包まれた小さな帯枕とか。

ヒコーキと呼ばれるお太鼓を作るときの

便利グッズとして売られた道具とかとか。

(持ってきている本人は使い方がわからずww)

 

いえ、それが悪いというわけではないのですが、

これから、きものを普段着として楽しみたいというのであれば、

着付け道具も、ちょっと吟味したほうがいいのです。

 

吟味といいましたが、特別な道具を揃えることはありません。

普通のものでいいのですが、

結構、上記のような“普通じゃない”(笑)ものを

持ってくる人も多いのです。

 

では、腰紐の良し悪しは?

 

あ、良し悪しと言いましたが、

これは、ワタクシ編集人が考える基準であって、

中にはまったく違う考え方をする方もいると思います。

 

例えば、ポリはすべるのと、締りがよくないので、

私は勧めないのですが、

ポリでも“素材”や“織り”の種類によっては

滑らないものもあると言われたことがあります。

 

編集人の不見識もあって、

そういう腰紐は使ったことがないのですが、

そこは、各人で違うので、

ひとつの参考としていただければと思います。

 

で、私の選ぶ基準ですが、そう大した基準ではありません。

 

  • 素材で言えば、モスリンか綿。(入手しやすいのと、摩擦があるので生地をしっかり留めてくれる)
  • 適度な幅があるもの。(胸紐として使う場合は幅広がお勧め。腰紐使いは多少細めでも) 
  • シワがないもの(これは使う人の管理の範疇になりますね。五角形にたたんで保管しておくとシワがとれます)

 

  ↓

適度な幅があるものといいましたが、

特に幅広である必要はありません。

普通程度に幅があるものでいいと思います。

胸紐でなく腰紐に使うなら細めでもOKです。

左から2番目の細い紐はたかはしきもの工房の「腰紐専用に使う腰ひも」。

だから細め。これくらい細いと五角形たたみはできないので折るだけで。

 

身丈が短いきものは、幅広の腰紐だと尺を“喰う”ので、

細めの紐を使うことで多少、長さを出すことができます。

 

 

IMG_3308.jpg

 

 

このシワシワ、これは✖↓^^;

編集部にあった(汗)

 

IMG_3303.jpg

 

 

基本、紐類は“面”で留めるように体に当てると楽なのと、

“摩擦”で生地をしっかり留めてくれます。

用途によって使い分けるといいと思います。

 

ただ、細いと丸まって縄状になりやすいのでアイロンが必要になることも。

細いものは五角形にたたみにくい。コロンと団子になってしまいます^^;

適度な幅がある方が、五角形にたたみやすい。

(→18日に画像入りで腰ひもの五角形のたたみ方、解説アップします)

人によっては三角たたみをする人もいます。

 

 

IMG_3310.jpg

 

 

さて、で、私は腰紐に何を使っているかというと、

モスリンや綿も使いますが、実はスタンダードは違います(笑)。

上記では一般的な、誰でも持っているものでオススメをしました。

 

 

 腰紐 → きんち(絹の楊柳)を自分の使いやすい長さに切って使っています 

 胸紐 → 伊達締を使います(しっかりした博多織)

 

フォーマル系の重いきものや、着丈が長めのきものは

腰紐と伊達締以外に、さらに腰紐を使うことがあります。

(ただ普段、私は腰紐1本で着るので、

それ以外の腰紐、胸紐、伊達締は通常、長襦袢にも使いません)

 

さて、“きんち”って何?

上にも書いてありますが、絹地→きんちと呼ばれる絹の楊柳です。

実は、これは使う時、丸まって

先程言った“面”にはなりません。

 

キンチ腰紐.jpg

 

 

しかし、何がいいと言って(私の場合です)

絹特有のしなやかさと、

体熱が伝わると体と一体化する

絹の特性と言い切っていいのか…わかりませんが、

丸まっても“異物感”が薄くなるのです。

 

この「体熱が伝わると体と一体化する」という特長を、

私は笹島寿美先生から伺って、

それ以来、キンチを使っています。

 

実は以前、絹の腰紐を使ったことがあります。

ところが、すぐに擦り切れてしまったのです。

今にして思えば、ペラペラの生地だったなあと思います。

それでも腰紐1本の値段にしては1300円と安くない。

なんでも試してと思って、検証した結果、

✖だった腰紐です。

 

しかし、いま使っているキンチはそこまで弱くありません。

弱くないといったのは、

丈夫さではモスリンや綿の方が長持ちすると思います。

紹介した画像のものを使っていますが、

もう少ししっかりした生地のものがあればなあと思っています。

 

 

笹島先生は、市販されていない、

一見すると帯揚のような(ほんとなんです)、

ボリュームがある(ように見える)絹地を

腰紐に使っていらっしゃいました。

そのときに、厚ぼったくないですか!?と

失礼ながら伺ったら、先の説明をしてくださったのです。

 

「絹はね、(体)熱が伝わると体と一体化するのよ。

そして私はこれがいいのよ」

 

それは特別に織り屋さんから取り寄せているものとのこと。

私は入手しやすいもので使っています。

 

そして、私には長いので、ハサミでジョキッと切って、

自分に扱いやすい長さにして使っています。

キンチはハサミで切ったままでもほつれません。

 

腰紐の長さって、結構大事です。

無用に長いとゴロゴロするし、処理に手間取る。

 

私はいわゆる蝶結びにはしません。

“衣紋結び”風な結び方をした紐を、左右に交差して挟み込みます。

 

“衣紋結び”は男物の袴でも使われることがあります。

ここでは画像がないのですが、

前でひと結び→上にきている紐を、一巻目の紐と一緒に下からくぐらせて上にだし→左右の紐を入れ換えて交差させ挟み込む。(※本来は交差させずに蝶結び等にするのが衣紋結び)

 

キンチは蝶結びでも体のなかに収まってくれますが、

モスリンや綿で、長さがあるものをお腹で蝶結びにすると、

場合によってはポコッとおはしょりの上から

出っ張ってしまうので、結ばないようにしています。

その習慣もあって、キンチも同様にしています。

 

ただ、人それぞれ。

自分が不安に思いながら使うのはよろしくないので、

安心できる要素(長さや結び方)は

自分のやり方をそう排除しなくてもいいと思います。

 

ということで、使い勝手のいい素材、長さ(→結構重要)を

検討してみて下さい。

 

 

ただ、ただ、ですね、

いま腰紐を選ぶ話をしていますが、これは自分で着る場合。

着付けをしてあげる場合は、あるものでやるしかない。

 

そしてプロは紐がなんであれ、プロの仕事をするものです。

 

 

ここで、私の自慢になる経験をひとつ。

弘法は筆を選ばず の話です。

 

その笹島寿美先生の取材のときに、

先生から、腰紐を締めてもらったことがあります。

 

着付けというのではなく、インタビューの流れから、

「腰紐、あります?」と笹島先生。

その辺にある、ごく普通のモスリンの腰紐をお渡ししました。

 

先生がきものを着ている私に、

きものの上から腰紐の位置に重ねて結んでくださったのです。

 

これがね! 

 

ほんとうに、驚き!ですよ!

 

ぜんっぜん!違うのです!

 

何がって、どういったらいいのでしょうか。

いままでにも話したり、書いたりしてきましたが、

なんとも説明しがたい、不思議な締まり感。

不思議なというのは、いままでに体感したことがない

腰紐の感覚だったからです。

気持ちいい!のです。

 

先生の『骨格着付け』の話題からだったのですが、

瞬時にきっちり腰骨と第四腰椎を仕留めて、

隙なく下半身のきものを捉える、

紐がしなやかな生き物みたいに目覚めた感覚でした。

 
私が使う紐と同じ紐と思えませんでした。

 

 
それから数日間、自分であの感覚を再現しようと思うけど、得られない。^^;

「紐がしなやかな生き物みたいに目覚めた感覚」と書きましたが、

先生の(入れた)腰紐が、名工の太刀だとすると、

私の腰紐は刃こぼれして錆びた鈍刀(なまくら)。

大げさに聞こえるかもしれませんが、

ほんとにそういう「切れ」のある、気持ちの良い締まり方だったのです!

同じ腰紐を使っているのに!

 

「力」ではありません。そのときで、先生、御年78歳です。

 

笹島先生の特集をしたときにこのことを書きました。

デザイナーさん(男性)が、これを読んで、

「なんか、すごい。どういう感覚なのかものすごく興味がある」と

興奮したのでした(笑)。

 

というお話が今日の最後のエピソード。

つまり、「弘法は筆を選ばず」。

 

でも私たちは、とりあえず、最低限は選んだほうがいいというお話でした~(笑)。

 

 

 

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