月刊アレコレのイベント

「雪花絞り・柄合わせ」のお仕立てについて、語ります。

さて!
続きです。
仕立ては、最近はデパートでも手縫い、
ミシン併用、そして国内・海外縫製がメニューとして提示されます。

それらのわかりやすい違いは“価格”です。
 
◯まず、手縫い
仕立ては、最近はデパートでも手縫い、
ミシン併用がメニューとして提示されます。

文字とおり、手縫いです。ミシンは使いません。
ミシンを使うより仕立てとしては“上級”になります。
しかし、このあとでも触れますが、手縫いとは言っても、
当然のことながら、キャリアの違いで上手い下手はあります。
ヘタな国内手縫いより、海外のベテランにほうがはるかにうまいと言う人もおりますが、
国内と海外の違いは、キャリアの違いとは別物の違いというか、
問題があります。

・手縫い → 国内縫製 と 海外縫製
・ミシン併用も → 国内縫製 と 海外縫製 があります。
・ミシン縫い → お仕立てではおすすめしません。
(ネットではたまにあり)。

 
あ、たまにハイテクミシン仕立てというメニューに
お目にかかることがあると思いますが、
これは(はっきしたことは言えないのですが)、
従来のミシン縫いとは違う、手縫いに近い縫い方ができるプログラムを
搭載している新型ミシン、“ハイテクミシン”ということのようです。
当然、開発費や購入費用の投資などがありますので、
普通のミシン仕立てより幾分、高めの価格設定になっているようです。

◯ミシン併用は、
ゆかたや木綿きもので注文する人が多く、
背縫いや脇などがミシンで、衿回りや裾、袖口などが手縫いです。
編集人もミシン併用の綿麻きものが何枚かあります。

なぜ、ゆかたや木綿に多いかというと、
昔と違い、木綿は(ほぼ)仕立て直しを前提としないからです。

正絹はいまでも仕立て直したり、寸法直しをすることも多いので、
ミシン縫いだとそれができなくなるからです。

解くとミシン目の孔(あな)が空くので、
前の寸法より小さいサイズにしか仕立てられません。
そもそもミシン縫いを解くこと自体が難儀です。

◯で、ミシン縫いは、
ネットの「お仕立て付き」というのに多く、海外縫製が多いです。
ミシン縫いが、なぜオススメできないのか。
 
ダメというわけではないのですよ。
選ぶ人が何を優先するかですから。

ミシン縫いの場合は大体価格の手頃さが優先されていると思います。
なので、それはそれでいいと思います。
 
でも、「なぜオススメできないの?」、
その理由を聞いた上で判断したいと言う方は、ご一読を。
 
和裁という技術は「布」と「体」に柔軟なのです。
ご存知のように布は布目があり、伸長性を持っています。
きものは平面の布を凹凸のある身体にまとう衣服なので、
布を体に運び巻きつけます。つまり着付け、です。
このとき、布目に添った適度な伸張性が活かされることで、
着くずれしにくい美しい着付けができるのですが、
このとき、手縫いだから“伸張性”が活かされるのです。

極端な言い方をすれば、
ミシンはガッツリ布を留め置くので、
布の伸張性が遮断されるのです。

それを引っ張ると布に負荷がかかり、手縫いなら糸が切れるところ、
ミシン縫いは布が裂けてしまうのです。
着付けでここまではないと思いますが、

例えば、お尻。 一番負荷がかかるところですが、
手縫いなら糸が弱ってほつれてきます。
そこで「あ」と気づいてほつれを直しますが、
ミシンだと糸がしっかりしていて身頃が裂けてくる“身裂け(みざけ)”になります。

身裂けするともう縫い直すことはできません。
最近、ドアノブに袖口や身八つ口を引っ掛ける、きものあるあるも、
手縫いなら糸が“切れてくれる”のです。
 
 
2016-01-04 22.48.27.jpg
また、手縫いならではの柔軟性があるから、人の動きにも添いやすいのです。
洋服でも肩ホールの袖付けがよくないと、肩が動きにくくなります。
動きにくいとまでは言いませんが、布が「固く」感じられます。
 
針目が細かいことがいいわけではないのです。
それは手縫いでも同様で、
針目が細ければ良いわけではありません。
とはいうものの、手が達者でなければ細かい針目では縫えないわけですが、
着る人のこと、きもののことをよく理解している仕立て職人さんは、
きものとして適正な針目もわかっているということです。

 
手縫いは、本来わずかな縫代(ぬいしろ)を……
というより端を指先でごくわずかに巻く程度で(巻縫い)、
“くけ縫い”をし、針目が表に出ないように袖口を縫います。
完全ミシン縫製は、針目が表に出るだけでなく、
袖口が味気なくぺしゃんこになります。

見た目としても安っぽく、美しくない。と思うのです。
写真はシルクウールのミシン仕立てです。


それが、手縫いとミシンを使った縫製の違いだと思っています。
細かく言えばもっともっとあるし、
和裁士さんたちはさらに付け加えたいことはあると思います。

また、そうは思わないという人もいるかもしれません。
これは私がきものを着ていて、個人的に感じていること、
識っていること、(仕立てについて)そう考えていることです。
数ある意見や見解のひとつと思ってくださいね。

私も手縫いだけしか着ていないわけではありません。
ミシン併用も着ていますし、ミシン仕立ても試したことがあります
(これはもう、職業病の試してみよう症候群(笑)です)。

 
◯さて、そして、今度は国内縫製と海外縫製の違いです。
まだ半分です。付いてきていますかー(笑)。
体調がイマイチの方はまたまた長くなりますので、後日にしてくださいね(笑)。
 
はっきり言って、最近は海外縫製でも上手な手縫いが多くあります。
残念なのですが、国内で縫う人がいなくなり、
海外にも出さざるを得ないという事態となり、
日本の技術を伝えた時期がありました。

その結果、日本人にヒケをとらない達者な縫製をする人たちも多いのです。
しかし、彼女ら(彼ら)には決定的な弱点があります。
 
あたりまえなのですが、日本文化を知らないということです。
きものを知らないということです。
だから、自分たちが縫っているきものがどういうふうに着られるのか、
どのような“かたち”になれば美しいのか、が理解できません。
 
“かたち”と言いましたが、フォルムそのものはきものは同じです。
しかし、「柄取り」に最大の難所があります。
わかりやすく言えば、大きな水玉がお尻の位置にきたり、
胸元に柄がきれいに出ていなかったり、ということです。
お尻の水玉模様が赤だったりしたら、もう最悪です(^_^;) おサルさん。
 
また、海外縫製は手縫いでも、流れ作業のことが多いのです。
新人さんが袖。次が身頃。一番手が達者な人が衿付けをします。
近視眼的な見方でしか縫製ができない環境であることが多々。
 
何回も言いますが、「海外縫製が悪い」と言っているのではありません。
それぞれの考え方と、コストパフォーマンスで判断すればいいことです。
昔は海外縫製を表に出さずに、国内縫製のときと同じ仕立て代を
お客さんに提示していましたが、いまは情報がしっかり行き渡って、

いままでにも述べているように、
仕立てにもメニューが提示されるようになりました。

選択肢があるということはいいことです。
なので、手縫いもミシン併用も、国内縫製も海外縫製も、
頼む品物と予算で選択すればいいと思います。
 
そのために、「日本縫製とどこが違うの?」と聞かれれば、
「この点が違う」ことがある、ということです。

また、海外縫製でもきちんと指導・管理して、十分な技術を持ち、



十分な仕上がりの海外縫製もいまはあります。
技術が落ちてきている国内縫製より、
ずっといい出来がいいという人もいます。
そして、残念ながら、それはあながち完全否定できないところが
辛いところです。

 
◯で、“柄合わせ”の話です。(まだ続きますよ~(^_^;)
仕立て代は、ある程度、きものの格に比例します。
同じ単衣でも、木綿よりは小紋や紬が高いし、付下げや訪問着がより高い。
振袖、留袖はもっとです。
 
が、柄合わせのセンスは実は小紋や紬のほうに要求されるのです。
作り手が着る人のことや、仕立てのことを知らずに作ったきもの、
特に、大柄や飛び柄は和裁士さん泣かせです。

それこそヘタをすると「お猿のお尻」になってしまいかねないので、
きちんとした(きちんとしていない人もたまにいるww)
和裁士さんは、柄合わせに悩むのですよ。

訪問着や付下げは、柄の出る場所を想定して染められています。
大体、後ろ幅八寸くらいで合うようになっていると思います。
それより極端に着る人の寸法が、大きい・小さい場合は、
脇での柄が合いにくいという問題点はありますが、
柄合わせ自体で、そう悩むことはないと思います。

 
柄合わせによって、イメージがまったく違ってくることがあります。
腕のいい和裁士さんは、そこを考えてくれるし、
本人の希望も聞いてくれます。

呉服屋さんでも仕立てに詳しいところは、
きちんと教えてくれますし、身長や体型で提案もしてくれます。

 
余談ですが、いまは反物のまま、和裁士さんに渡しますが、
かつては呉服屋さんが反物を裁って和裁士さんに渡していたんですよ。
もちろん、柄取りのこともよくわかっているから鋏を入れられるのです。
いまは編集人が知っている呉服屋さんのなかでは一件だけ、
西尾のあづまやさんというところです
(裁っていないから仕立てに詳しくないということではありません)

 
◯さて、藤井絞の雪花絞りです。
はあー、やっとゴールが見えてきました(笑)。
足腰にきていますか、ラストランです(笑)。
 
雪花絞りは
「有松・鳴海絞」の技術で、いわゆる板締め絞りです。
写真のように生地を畳んで染めます。
多少の誤差はあるにしても基本、規則正しい同型が並びます。
するとどうなるか。
雪華絞り画像.jpg
 
合わせようと思うと、雪華が合うんですね。
あ、先に言っておきますと、
これは合わせるのが「あたりまえ」ではありません。

合うように時間をかけて計算し、柄合わせを熟慮の上、裁つ!
こういう風に書くと、もう柄合わせが当然、合っていないのは手抜き、
腕のない和裁士、と思い込む人がいますが、
違いますからねええええー。
まあ、確かに腕の裁つ和裁士さんじゃないと
出来ないのは確かですが、

柄合わせには、別料金がかかると思ってください。
だから、ある意味、小紋柄の柄わせは訪問着より大変なのです。
 
で、写真の雪花絞り。
IMG_0178.JPG
すみません、なぜか画像が寝ています。(直らない。。。汗)
背縫いのところ、気持よく、ちゃーんと柄が合っています。

これは、今回「お仕立てトーク」をお願いしている和裁士・平山さんに
柄合わせ代をお支払いしてお願いしました。

ご本人に言わせると、有料でも
「正直、やりたい仕事ではないですよ(笑)」
「すっごく大変ですもん(^_^;)
 
でも、柄がきっちり合うと、着るものとしての“格(品)”が増します。
(カジュアル・フォーマルで言うところの「きものの格」ではありません)
 
ゆかたでも、夏きものとして着られる。
カジュアル夏きものとして着られるけど、
普通の綿麻より、もうちょっといいところへも行けそうな……
そんな着るものとしての“顔”が一段アップする、感じなのです。
それが、“格(品)”が増す、というイメージです。
IMG_0175.JPG
 
雪花絞りは正直、安くはありません。
藤井絞の藤井社長は「日本で一番高いゆかたです」と笑い飛ばしますが、
いまでは少ない職人たちの手をかけて、染める雪花絞り。
そして、仕立てで“顔”がまた良くなる柄。
 
大人のゆかたとして一枚、持てたらいいなと思いました。
で、去年、「えーーーーっい!!!」←清水(きよみず)ジャンプ(笑)
 
生地の心地良さと、何よりも!
夏気分が上がります。
“雪花絞り”が夏らしさを満喫できる風物詩的な着姿になっているのです。
子どもの頃にゆかたを着せてもらったときのような、感じ??でしょうか。
子ども心に、ノリの利いたゆかたは
それだけでうれしい「夏休み!」の実感でしたね~。
FullSizeRender.jpg
 
ということで、
■17
日(日)は13
:00~
和裁士・平山瑠美さんの「お仕立て相談&トーク」もあります。
 
■その前日の 16日(土)はワタクシこと編集人みやざの
「ゆかた&夏きものコーディネート塾」も開催致します。
 
どちらも無料です。
遊びに来てくださいねーーー。
 
ゼイゼイ。おわた。。。。
すみません、長くて。。。
こんな編集人が作っている月刊アレコレは
書店では購入できません。
こちらから年間購読をどうぞ。ポチッと(笑)。
バックナンバーもご購入いただけます。
ただいま「大竹恵理子のプロのための着付けブラッシュアップ講座」、
受講受付中です。申し込みはこちらから。
この講座についてのブログは、こちらを
あ、大竹さんは金麦ではありませんが、
エビスビールなどの滝川クリステルさんや、タレントさんのCMほか、
伊勢丹、七緒などのスタイリングと着付けをしているかたです。
 
 

カテゴリー

タグ一覧