日記・つぶやき

昭和5年発行の『實物標本付 織物講座』

織物講座テキスト 
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お宝をいただきました! 『實物標本付 織物講座』と書かれた教本3冊。
いただいた昨日は興奮してしまいました^^;
開くと本の題にあるとおり、生地の見本が! 貼り付けられています。
↑下の写真には 能登上布と絹麻縮!

上は能登上布 
 経糸ラミー糸八0番手 緯糸ラミー糸八0番手 巾一尺 長三丈一尺 価格六(~)七円ヨリ二十七(~)八円迄アリ。
下は絹麻縮 
 経糸ラミー糸一00番手、緯糸絹糸撚糸練糸。七円位ヨリ十三(~)四円。
当時から能登上布はある程度高価だったんですね。
でも、近江麻の白絣は能登上布と同じかそれ以上に高価だったのに、こんにち、なぜ?の逆転? 近江は生活用品にまで販路を広げて生き残りを図ったから、かなあ。
結局、行き渡るものは廉価になり、希少性が高いものは高価になるという、
あたりまえの資本主義構造なんだけど。
それが現在の伝統産業のブランディングに大きく影響しているのも事実。


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こちらは明石縮と石下紬(写真上)。
石下には
「茨城県石毛町に産出する織物で一見結城紬風の織物である。
石下紬は経糸は絹糸(玉糸)緯糸に綿糸を用ひた普通平織である。
大正中期より晩期頃、弱撚綿糸御召緯を織り込み足るものを豊田紬として称し、
発売され大いに好評を博した。
偶々此豊田紬は茨城件豊田の地名を冠し登録をうけたものが出来たので、
他の業者は一般に石下紬の名称を用ひて居る。
本品は絹綿交織で経済的であり且つ外観体裁優秀なる為各地で模倣するようになつた」
現在、石下紬も数少ないのですが、結城市で織られているということで、
本場がつかない結城紬として売られていることもあります・・・。
↑下の糸見本は紡績綿糸。「主なる番手」として番手を記しています。
右から 右撚十番手 左撚十六番手 左撚三十番手 瓦斯糸八十番手二子
このほかにも、蚊帳や帆布、タオル、足袋の底の見本まで貼ってあります。
帆布は「通語ヅツク」と呼ばれた生地で、いわゆる昔、子供が履いていたズックの語源ですかねー。足袋の底は「石底」と呼ばれる綾織組織の地厚な織物、とあります。
石底の価格は重さで決められているようでした。三十五銭(百匁ニ付) とか。
楽しいなあ~。そして巻末にちょっとした文章が載っており、その中の「産地景観 足利の巻」での
産地足利についての論説が、まんまいまの足利の評価と相似形で、昭和5年からすでにと思ったのは、
『足利の織物産地としての地位實力は玄に謂うふべき必要はないが
特に目立って居るのは変通自在、時勢順應と謂ふ処にあると言つたら足利人は怒るかしら。(中略)足利には謂う処の古来からの一貫した有名品がない』
いまでも、足利の人にいったらいい顔はされないかもしれないけど、まさに!の感想である。
折を見て紹介していきたい貴重な資料です。
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