アーティスト石原輝雄氏と、アレコレの筆文字のこと。
初めて仕事で出会った当時、石原さんはデザイナーでみやざは広告代理店のコピーライター。
会社で数度会ってはいたのだが、ある日、こちらが石原さんの事務所を訪ねる用事があった。
事務所の壁面に飾られていた、包帯を巻いた野球ボールの大きなイラスト―。
みやざは石原さんに出会う以前にそれを見たことがあったのだ。
グラフィックデザイン関連のコンペで、現代美術館かどこかだったような記憶がある。
包帯を巻いた野球ボールと、同じく包帯を巻いた林檎のイラストが対になって並べられていた。
タイトルは定かではないが「傷を伴う十代の少年少女」をテーマとしていたそのイラストは何某かの賞を受けていた。
やはり同コンペに出品した友人がパッケージ部門で入賞したので見に行ったとき、膨大な作品の中で石原さんのそのイラストがやけに印象的に目の奥に焼きついていたのだ。そのときから3~4年は経っていたと思う。
「これ、石原さんのだったんですか!?」
それから20年以上経って、石原さんはいま画家、アーティストと呼ばれる人になった。多忙をぬって毎年といっていいほどコンペに作品を応募していた。
「本当に描きたいものを描きたいし、自分に課する部分もあるしね」と笑っていた。
久しくお目にかかっていなかったのだが、昨年末、月刊アレコレの表2(扉ページの裏)で使う筆文字をお願いしに事務所へ伺った。
旧暦での各月を漢字とひらがなで書いてもらった。
社の担当者から「彼に(予算)いくらで頼もうと思ってるの!?」
「え? 予算ないから○○円くらいで…」←確かにありえない金額。
担当者絶句。
「…まあ君が頼んだら受けてくれるかもね…言ってみれば」……放置?
でも石原さんは久しぶりの再会を喜んでくれて、快く引き受けてくれた。
みやざ…悪党かも。
商業デザイン関係の雑誌で特集が組まれたその本と、
都美術館で行われている「モダンアート展」の案内とを手紙と共に下さった。
連休中の開催だから、仕事を終わらせて石原さんを見に行こう。