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月刊アレコレVol.23(2006/11/25)「きものびと十人十彩」から

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吉野美奈子(よしのみなこ)さん(画家・彫刻家)

美奈子さんは9・11に遭遇した。アーティストとして、日本人として、1人の女性として、「平和」に向き合いながら創作活動をする彼女に聞く、きものとアートとニューヨークの話です。

■振袖の着付けコンクールで優勝したことがあるんですよね。それに参加するきっかけは何だったのですか。

成人式のときに親は“振袖”って言いますよね。でも、わたしは「いらない、いらない」「だったら代わりにニューヨークへ行かせて」って言っていたのだけれど、結局それは聞き入れられず(笑)振袖を誂えに行ったんですよ。でも、行って見たら、もうダメッ。ハマッちゃったの。これはアートだわって(笑)。で、自分で着たくなっちゃったのね。1人で着られないのはヘンとか思って、着付け教室へ通い始めたんです。そうしたらお稽古初日で、帯を3回目に絞めた時に先生が「あなた、(振袖の着付け)コンテストに出なさい」って。う~ん、何ででしょうね。「見て」わかるからっておっしゃって。それからは、もうコンテストに向けて真っしぐら。コーディネイトもして、帯結びも創作なんですよ。前の晩までずーっと練習して。それをステージ上で、自分が着ていくんです。で、優勝しちゃったのー(笑)。

■その感性と爆発的な集中力は、アーティスト吉野美奈子そのものですね。ニューヨークでもそのままの勢いで――。

ニューヨークは自腹で(笑)で短期間行きました。現地に着いたとき、日航のカウンターにディスプレイされていた振袖を見てすごく感動したのを覚えてます。日本のアートよね、まさに。でも私自身はまだアートの世界に重心は置いていなくて――。JTBでOLをしていたんだけど、どうしても絵の勉強したいという気持ちを抑え切れなくて、働きながら美大へ行ったんです。そして入社10年目で絵に専念するために退職して、絵画の講師をしたり、ニューヨークのアートスクールへ短期で勉強に行ったりしました。そのときたまたま隣の席にいた男性との縁で、彼が携わっていたランドマークの修復作業に関わることになったのね。修復した大理石を(歴史を経てきた)元の色に塗る作業なんですけど、その色調合を頼まれたんですね。

■その大理石修復がきっかけで、彫刻、新人賞、そして"Awaken(目覚め)"(の受賞)につながっていくんですね。

でもそのときは色調合だけやって、色のデータを作って日本へ戻りました。でも彼らだけでは出来なくて、もう一度来てくれということになって。じゃあ、その間、仕事をしながらその報酬でアートスクールに行こうと。再び渡米しました。でもそのとき、作業中に不要になった大量の大理石の石片が廃棄されているのに気がついたの。それがとっても許せなかったの、私の中で。大理石ってこの星が何億年もかけて作ってくれた“地球のかけら”でしょ、高価だし。もう、そのままにはしておけなくて、スクールの彫刻科へ行ってその大理石を寄付したいと申し出たの。そうしたら保管場所の問題が真っ先に上がって、結局その提案は無理だということになって。納得がいかなくて食い下がったら「ミナコ、まずあなたが彫ってみたら」。え? って感じですよね。結局、寄付してあげると申し出た私が、授業料を払って勉強してその大理石を彫る羽目になった(爆)。完成までに紆余曲折があった処女作品でしたが、それが買い上げられたんです。

■ニューヨークという街は美奈子さんにとって、大きな創作エネルギーになっていますよね。

ええ。生活・創作面において、いろんなトラブルや危機的局面もあったのですが、ニューヨークという街の空気、“アート スチューデント オブ リーグ”という素晴らしいスクール、そして現在はもうないのですが、私が住んでいた“111(ワンイレブン)”というアーティストが集まっていた場所が私にものすごいエネルギーを注いでくれたんだと思っています。特に“111(ワンイレブン)”では素晴しい、本当に2度と出来ないような経験をさせてもらったんです。いい仲間に恵まれたと感謝しています。同じような場所を日本にも作りたくて、今度 “111TOKYO”を立ち上げるつもりです。12月には帰国して、ニューヨークでお互いのゆかた姿が縁で知り合った(笑)、イサドラ・ダンカン国際学校日本大使の佐藤道代さんと「つらなり」というアートコラボレーションを開催します。私は彫刻展覧会や詩の朗読などを。作品が間に合うか、心配(笑)。

あとがき
たった5年前に伝もなく、スーツケース1つでニューヨークへ行った美奈子さんが、ドラマティックな展開から彫刻に関わるようになり、その4年後に米国最古の彫刻協会から新人賞を受賞、今年NPO女性作家協会Pen&Brushの記念彫刻エクジビションにおいて「名誉賞」を受賞……。でもラッキーとは違いますよね。「運」以上の自前のエネルギー生産量がちょっと半端じゃない(笑)。そして周囲の人を幸せにする人です。12月の帰国も楽しみです。

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