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月刊アレコレVol.45(2008/9/25)「きものびと十人十彩」より

写真/Junko Yokoyama
紗幸(さゆき)さん(芸者・社会人類学者)
15才のときに交換留学生としてオーストラリアから日本を訪れた女子高校生は、日本の文化と社会を研究する学者となり、ジャーナリスト、番組制作のプロデューサーとしても活躍するようになりました。そしていま芸者として花柳界で生きる紗幸さん。彼女に芸者となる決心をさせた花柳界の美意識は、日本の美しさでもあったようです。
■花柳界に魅せられて
芸者となった元のきっかけはテレビ番組の企画書です。映画「SAYURI」はあくまで米国人が制作した映画であって本当の日本、本当の芸者の世界とは違います。フィクションではなく、ドキュメンタリーとしての芸者、花柳界を取材し、番組として制作しようということだったのですが、その過程で私自身が芸者になることを選択したんです。でもいざとなったら花柳界独自のしきたりや伝統があって、思ったより入るまでに時間がかかりました。外国人だからということではなく、日本人にとっても花柳界は特別な世界ですから、私が大変と思ういろいろなことは日本人であっても感じることだと思います。私は15才で交換留学生として来日して以来、日本の大学を卒業し、就職もしました。その間、海外へも行っていますが、半分日本で育ったようなものなので、私の感じ方は普通の日本人の感覚とあまり変わらないと思います。
■目標は一人前の芸者になること
社会人類学者であるとか、MBA(経営学修士)を持っているとか、海外で暮らしたことがあるとか、そういう経歴を持っているところが私が普通の芸者と違う点です。でも花柳界という奥深く美しい世界に魅力を感じますし、失われつつある日本の文化が存在するところも素晴らしいと思います。最初は研究者・ジャーナリストとして興味を持った芸者ですが、正式に置屋のおかあさんにお世話になって、礼儀作法やしきたりを覚え、修行をしてきました。そして昨年暮れに芸者・紗幸としてお披露目をしましたので、芸者は私にとって制作番組のための「体験」ではありません。ドキュメンタリーとしては今も撮っていますが、現在の私はとにかく芸者として一人前になることが目標なんです。
■芸者ときもの
私はきものが大好きで、芸者になってからいろいろ探したら、(日本の)高校時代に家庭科で縫ったゆかたが出てきました(笑)。それと当時、浅草の観音様の裏にきもののお店がいっぱいあったんですが、そういうお店を見るのも大好きでした。芸者になるまでに着たきものは、多分普通の日本人と同じくらいだと思います。ゆかたや成人式の振袖、大学の卒業式ではきものに袴でした。卒業式のときは1人では恥ずかしいので友達4~5人に家まで迎えに来てもらいました。覚えているのは私が外に出たとたん、男性が振り返って私を見て、それで柱に思い切りぶつかったんです(笑)。最近すごくうれしいのは、ゆかたでデートをする人たちが増えたことです。以前はありえませんでした。きものを着る文化が戻ってきたのはうれしいことです。たんす屋さんのようなリサイクルショップが増えたのもすごくいいことだと思います。きものが一般の人の手に届くようなって、しかもリサイクルできるというのが素晴らしいことです。私もたんす屋さんのセールでは普段見られないようなアンティークのすばらしいきものがたくさん出るので、見て触れて勉強させてもらっています。本当にきものは好きなので、呉服屋さんへ行ったらキリがないです(笑)。
■好きなきものはエレガントな絽や紗
芸者衆のきものの着方は本当にきれいですが、ゆかたを着ている一般の若い人たちも帯結びなど、それなりによく研究していると思います。とても素敵なことです。でもひとつ残念なのは、洋服と同じ色の組合せをしていること。同じ色や同系色ではなく、日本独自の色合わせを楽しんでほしいと思います。私自身はきものでは絽や紗がすごく好きです。エレガントで。ラッキーなのは置屋のおかあさんはその年代では背が高いので、私とサイズが同じなんです(笑)。引き着のときは着付けさんに着せてもらいますが、今日のようなきものは自分で着ます。一般的に着付けてもらうと補正をするでしょう? だから最初補正は必要なものだと思っていたんです。特に私は日本人と体型が違うので(タオルを)いっぱい巻いていたんですが、先輩のお姐さんに「そういう体型ならそういう体型の着方をすればいい」と言われて少しずつ補正をとってみたら、本当にいつのまにか必要なくなりました。自分の体を知ることで、自然に自分の体型にあった着方ができるようになったんですね。
あとがき
紗幸さん、猛暑の日にありがとうございました。でも紗幸さんが汗をかかないのが不思議でした。プロなんですね。そして正座した姿が本当に自然できれいでした。しかも崩れない。いまや正座を30分以上していられる日本人なんてどれだけいるでしょう。一流の芸者は芸事に加えて豊かな知識と教養を備えていると言われますが、芸者・紗幸の知性と感性はお座敷でも生かされているのでしょうね。これからがさらに楽しみです。











